一般社団法人 日本機械学会 熱工学部門

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小麦プロトプラストの凍結・解凍におけるミクロ挙動

高校大学一般研究

Keywords

【凍結】
【解凍】
【細胞】
【過冷却】
【氷晶形成】

小麦プロトプラストの凍結・解凍の様子を顕微鏡で観察した映像です.細胞の大きさは約40ミクロンです.

(上段のビデオ)
冷却速度1℃/minで-30℃まで冷却し,その後,昇温速度10℃/minの条件で10℃まで解凍した細胞の様相です.まず,細胞外領域の凍結が優先して起こり,セル状の氷結晶が成長し,細胞を取り囲みます.凍結に伴って溶質が排出されるため,細胞外の未凍結領域の溶質濃度が上昇します.このため,浸透圧差により細胞内の水が半透性の細胞膜を通って細胞外に移動する結果,細胞は脱水・収縮する様子が観察されます.脱水に伴って細胞内溶液は濃縮されるため,凝固点降下が生じ,細胞は-30°まで過冷却状態を維持したまま未凍結の状態となります.次に,解凍過程では,細胞外氷晶が徐々に融解し,細胞外溶液は希釈されます.このため,浸透圧差の向きが逆転し,細胞外領域の水が細胞膜を通って流入し,細胞は吸水し,体積が増加します.10℃まで昇温すると,ほぼ元の形状まで回復することがわかります.

(下段のビデオ)
冷却速度90℃/minで急速凍結した様相です.細胞外氷晶はデンドライト(樹枝状)の形態となり,一気に細胞を取り囲みます.その後,細胞内が暗化する現象(フラッシング)が観察されます.これは,過冷却状態から細胞内に生成された多数の微細氷晶が光を乱反射させる現象です.このように細胞内凍結を起こした細胞は,細胞膜が氷晶による機械的損傷を受けるため,解凍すると,細胞膜が破壊し,致命的な損傷を受けている様子がわかります.したがって,細胞を凍結保存する際には,凍結損傷を最小にする「至適冷却速度」が存在することが理解されます.


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投稿者情報

金沢大学 理工研究域 機械工学系  多田幸生
メール:tada(a)se.kanazawa-u.ac.jp ※(a)を@に変えてください。
ホームページ:http://www.me.se.kanazawa-u.ac.jp/netsu/

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